次世代の施設園芸へ

特許技術『ドローンの風向き変換部材』が切り拓く、ドローン受粉の新たな可能性

ドローンのダウンウォッシュを鉛直下向きから水平送風へ変換する技術です。

施設園芸が直面する受粉作業の課題

省人化と品質および生産効率の向上を目指す施設園芸において、収益性の鍵を握る受粉作業は「手作業」や「蜂」の利用に大きく依存しています。 特に蜂による受粉は、農薬の影響や、近年頻発する異常気象による温度管理の難しさといった問題を抱えており、施設園芸の規模拡大と自動化を阻む大きな要因の一つとなっています。

そこで解決策として期待されるのがドローンです。しかし、従来のドローンは真下に吹き付ける風(ダウンウォッシュ)の特性上、その応用範囲は極めて限定的でした。私たちは、この人手不足と作業効率の限界という課題を解決するため、その活用における以下の問題に挑みました。

  • 移動の非効率性: ドローンのプロペラが生みだすダウンウォッシュは鉛直下向きのため、受粉対象となる一つ一つの花房の上空まで機体を精密に移動させる必要がありました。この移動の繰り返しは、非効率な作業であり、多大な時間とバッテリー消費を伴います。
  • 作業空間の構造的限界: 多段棚の設置 、作物の上を覆う固定具がある環境、また天井の低いハウスなどでは導入が困難であり、これが施設園芸の規模拡大と自動化を阻む大きな障壁となっていました。
そして開発されたのが「ドローンの風向き変換部材」です。

これらの限界を突破したのが、ダウンウォッシュの風向きを水平に変換できる本特許技術です。「風向き変換部材」は、単に風の向きを変えるだけの単純な部品ではありません。空気の流れと機体への影響を精密に制御するための工夫を凝らし、飛行の安定性を損なうことなく、送風効率を最大化できるように設計されています。この技術の活用により、天井の低いハウスを含む環境下で、ドローンによる効率的な受粉を実現します

風向き変換を実現する技術要素

技術的特徴 分析と利点
湾曲変換部 風向きを滑らかに変換する湾曲面設計を採用。これにより、風向きを変える際の風量や風速のロスを最小限に抑え、プロペラが生み出すエネルギーを無駄なく受粉作業へと活用します。
左右対称の配置 複数のプロペラ下に左右対称で設置することで、強力な水平送風を行いながらも、機体の飛行安定性への影響を極限まで低減し、安全なオペレーションを実現します。
最大90°の変換角度 風向きを鉛直下向きから最大で水平(90度)に変換可能。これまで物理的に不可能だった側面アプローチを可能にし、多段棚などでの作業効率と自由度を飛躍的に高めます。
揚力維持のための部分変換 ダウンウォッシュの全てではなく、一部のみを水平方向へ変換。飛行安定性に不可欠な揚力を維持しつつ、受粉効果を最大化する指向性のある送風を実現。相反する要求を見事に両立させる高度な設計思想です。

先端技術との組み合わせによるシナジー

私たちが目指すのは、風向きを変えることの先にある「受粉プロセスの完全自動化」です。 本特許技術をコアとして、今後はAIやセンシング技術との統合を視野に入れ、さらなる進化を目指します

1. 操作の自動化による安定性

現在開発中の自動操縦技術は操縦者のレバー操作のスキルを必要せず、安定した再現性のある飛行を実現。

2. AI画像解析と動的ルート最適化

ドローンに搭載された高性能カメラの画像を利用しリアルタイムで人や障害物を検知し、衝突リスクを回避する最適な飛行ルートをリアルタイムで形成。また開花状況や株の状態をAIにより分析し管理する

3. 多数機同時飛行による業務の効率化

ドローンを複数機同時飛行させることにより、授粉作業にかかる時間を大幅に短縮。

4.環境制御システムとの連携

温室の環境制御システムから温度・湿度データを取得し、「温度20℃以上28℃以下、湿度70%以下」といった受粉に最適な環境とシンクロする事で受粉不良のリスクを低減。

ドローンの気流を変換する技術を用いた農業分野におけるアプリケーションは、受粉作業に限定するものではありません。今後、発展の要素を秘めております。